Monochrome and Colorful days

無彩色で極彩色な日常あれこれ

機械に人間は必要か - 戦闘妖精雪風 改


神林長平著:戦闘妖精雪風<改>を読んだ.
意識を持つ機械のハナシを友達としていたら,この本を薦められて.
「機械が知能持つってこんな感じ?」って言われて借りてみました.


分野としてはSFで.
南極大陸に出現した超空間通路から未知の異星体「ジャム」が地球侵攻を開始する.
人類は反撃のため,通路の向こう側に存在する惑星フェアリイに地球防衛隊的(実際はちょっと違うけど)組織FAFを編制し派遣する.
そしてこの本は,FAFの戦闘電子偵察機・雪風と,そのパイロットである深井零の物語.
正体不明のジャムとの戦いや,時間の経過と共に変わってくる雪風と零,そしてその周りの人々の話なんだけれども.


何がすごいって,まずこれが1984年に書かれたものなのか!と.
全く古臭さを感じない,というか,時代がようやく追いついてきてるって感じで.
あ,だから当時はSFだったのか?
ジャムはさておき,雪風に対してはリアリティを感じる.
本の内容は色々深くて,人間模様とか非人間的であった零にだんだん人間味でてくるとか.
実はこの戦争は「エイリアンVS人間」ではなくて「異星コンピュータVS地球型コンピュータ」なんじゃないかとか.
というか戦争に人間は必要なのかとか.
そんなことが出てきて,話としてすごく面白い.


けど,機械+知能に興味がある自分としては,機械の知能に目が行ってしまうのでこっからはそんな話になります.
雪風は人工知能が搭載された戦闘機で,パイロットである零の操縦から,様々な「飛び方」「戦い方」を学習する.
雪風は,初期段階では零の操縦によって空を舞いジャムの攻撃をかわし,文字通り零の「右腕」であった.
しかし,時間の経過と共に雪風は多くの戦闘経験から学習を進め,零が居なくても自身のコンピュータ制御によって「飛べる」ようになる.
しかも,それは零の操縦以上に確実なもの.
自分の読了後のイメージだと,最終的に雪風はコンピュータとして零から独立してた.


雪風のそもそもの任務は「情報を収集し,必ず基地へと帰還すること」.
この目的を達成するのに,零という人間が必要か,不要か.
雪風の性能を考えると,零は不要でむしろ「お荷物」だと思う.
人間だと耐えられない加速とか衝撃とかあるし.
ただ,人工知能の精度がどうであれ,全く未知の状況に出くわす可能性があるのならば,そこに人間は必要な気がする.
あと,戦闘以外での進化要因がないこと.
人間だったら,全く違う物事から関連づけて,自分の分野の発想に結びつける場合があるけれど.
例えば焼き鳥屋のねぎまからV-TECを発想するみたいな感じで.
機械の知能に果たしてそれができるのか,と.
けど機械やったらむしろ計算からそんなんはじき出せるのかな?
というか,「これは機械には無理」とか「機械には人間がいなきゃ」とか思うのも,人間の思い込みとか思い入れによるものなのかなぁ.
雪風が一人でできるもん☆ってなった時悲しかったし.


小説だけでなく映画でも,機械が地球を支配する話とかあるけれど.
人工知能が発達したら,機械に人間は不要になるんだろうか.
まぁ,まずは意識を持つ機械っていうのが実現できてからなんだろうけど.
これからの時代,結構リアリティを感じます.むしろ今こそ読んでほしい!
そんな感じで面白かったです.
続編も読んでみようかなぁ.



link:http://www.safins.ne.jp/~soumon/kanbayasi-yukikaze.htm戦闘妖精雪風のサイト)
link:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0905/27/news022.htmlITmedia,意識が機械で再現できるって話)
link:http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0414/kyokai24.htm(PCwatch,人と機械の境界面について.軽い研究紹介?)